きもの四方八方[ 伝え継ぐもの ]

3・4・5月
結城紬 長着三枚
今年は私の祖父 板谷波山(陶芸家)の生誕150年の
年に当り、郷里の茨城県筑西市(下館)を起点に回
顧展が開催されます。祖父は郷里を大切にした人で
したが、とりわけ身内に縁のあった結城紬はふるさ
と自慢の贔屓の品でした。1963年の彼岸への旅立ち
の衣裳も白羽二重に、縞帳で誂えたお気に入りの結
城の袴でした。
現在、私が重宝に着用している祖父の結城三枚は、
形見分けで分散していた品が私の許に集まったもの。
藍地の細縞は母から。あまりに糸が細くしなやかな
ので結城の織元の奥庄さんに見てもらったところ、
「これが結城でなくて何だと思うのですか」と温厚
なご主人に強い口調で嗜められた思い出の一枚。
茶と藍のみじん格子の結城は、従兄の研三さんから
「僕は着ないからあきちゃんが着たらいいよ」と渡
されたもの。渋い色味がとても気に入っています。
藍鼡のみじん格子に薄紅の糸が入っている優しい色
目の結城は、伯母が亡くなった後、従妹が「波山さ
んの形見と言って大切に着ていた」と。若い頃の伯
母が偲ばれるピンク系の裾廻しがついていました。
こうして私の許に集まった波山さんの結城は、一般
的な男物結城に比べると優しい雰囲気が漂っていて
少しの違和感もなく私の箪笥に納まっています。
亡くなる数年前、祖父は遠縁の織元に頼んで端布を
集め、和紙に貼って冊子を作りました。祖父の手で
「現代結城」と書かれた冊子の断片を眺めていると、
その当時、無形文化財の認定を受けて機元が意欲的
に制作していた様子が想像されます。そして、本業
以外のことにも興味を持って真剣に取り組んでいた
祖父の姿を思い出します。