きもの四方八方[ 伝え継ぐもの ]

12・1・2月
振袖 竜巻絞りに友禅と刺繍「モダン松」村田吉茂 案
前回のきもの四方八方でご紹介した技法と同じ「竜
巻絞り」の振袖。この絞りは、身頃と袖に文様を描
き入れる余白を生地白のまま残すことが難しい仕事
だったようです。若松をデザインした文様は、墨と
朱の鑞纈染で大胆に描かれ、地は薄墨と朱の雲ぼか
し(暁雲と呼んでいました)。松には所々に金糸の
縫いを配らっています。
この振袖は、私が村田嫁入り時の先代の力作です。
亡夫は仕上りを見て、細身で小さく、目鼻立ちもぼ
けた私が着こなせるかどうか心配顔でしたが、絞り
の鮮やかな群青色もさほど違和感なく、意外に調和
して装うことができたのでした。息子の結婚式でご
来賓の呉服専門家の方々に、この振袖を見て頂きた
い父の意気込みが込められていたと思います.
この後も村田家の婚礼では、嫁も娘も大切に着継い
でいます。私は父が誂えてくれた洛風林の朱地に金
の袋帯「亀甲に鶴」、嫁は同じく朱と金の高尾弘さ
ん作「ねん金」の帯、娘は木村捨松さんの白地「正
倉院葡萄唐草」の帯をのせました。合わせる帯によ
って雰囲気が変わり、着手の個性を静かに表わして
くれる着物なのです。