コラム

きものの話あれこれ 村田吉茂
1971年(昭和46年)11月「ミセス」掲載

No.11 いいきものを売るために
お客さまを正しくリードする店に

 戦後きものの考え方が大きく変わりましたね。小さい例では、結城つむぎに対する価値評価が変わりました。昔は結城を、高価ではあるけれど、ちょっと見は木綿に見える、つまり高いものだけれど安いものに見せたいという控えめな気持ちから着たものでしたが、今では高価な結城を着るとお金持ちのように見えるという考え方で着るかたが多くなりました。それゆえ業者は、高そうに見える、手間と技巧をうんと凝らしたものを作ることに専念し、結城本来の姿を見失いがちのように思えますね。

 業者というものは、お客さまよりも一歩も二歩も先に歩いていなければならないものです。といっても、流行を作って波に乗せるということではありません。めまぐるしく変わる社会の動きに目を止めて、その動きの中できものの美はどうあるべきかということを考え、勉強し、お客さまを常にリードする(流行を押しつけたり、いたずらに高価なものをいいものと思わせたりするのはリードとはいえません)、このような姿勢を持って臨まないと、お客さまの信用を得られなくなってしまします。

 昔はきものを実用着として着ていましたが、これからは着るかたの美と教養の表れとしてきものを着るようになっていき、美意識も教養も高度なかたがきものをお召しになっていくでしょう。そうなると、利益の追求だけを目的としているような業者は、いつか、そういうほんとうのお客さまたちから見放されていってしまう、と思うのですが…。