コラム

きものの話あれこれ 村田吉茂
1971年(昭和46年)11月「ミセス」掲載

No.11 いいきものを売るために
値段を先に見ないこと

 値段の話のついでにお話ししますが、店できものなどをごらんになるときは、けっして先に値段を見ないことです。「あら、ちょっとよさそうなきものだけど、いくらかしら」と、商品をじっくり見る前に値段を見てしまうと、その商品の正しい姿を判断することができません。「いいと思ったけど安物ね」とか「それほどではないと思ったけど、この値段だったら相当いいものだわ」などと、値段で価値判断をしてしまいます。

 ですから、大きな値段票を反物の真ん中に麗々しく表示するなんていうことは、いいことではありません。こんな高いものを扱っている店であるとばかりに値段の高さを誇示したり、逆に値段の安さで人目をひいたりということは、あまりいい商売のしかたとはいえません。きものや帯は一山いくらの野菜や卵なんかとは違います。商品のよさをじっくり見ていただいたあと「なかなかいいものだけど、いったいいくらかしら」と、改めて値段を見る、その時に明確に表示した控えめな値段票が目にはいる、そんな表示のしかたが好ましいのです。

 お店の中には、値段を表示しなかったり、故意か偶然かわかりませんが、値段票をひっくり返したままにしている店がありますが、これもお客さまに対して、たいへん不親切なやり方ですね。  値段票のつけ方一つを見ても、その店の見識と、お客さまに対する心づかいがわかるというものです。