コラム

きものの話あれこれ 村田吉茂
1971年(昭和46年)4月「ミセス」掲載

No.4 きものを美しく着るために
自分より高度な人をお手本に

 ただ、人を見るといっても、ご自分より高度な人を見るのでなければなんの意味もありません。誤解のないように申し上げておきますが、高度というのは、身分、地位、経済的な意味の高度ではありません。感覚的に高度な人という意味です。美の感覚は、自分で心して高める訓練をしないと鈍ってしまい、美しいものが理解できなくなり、おいしいものが味わえなくなってしまうものなのです。 

 すべて、自分を高めようという姿勢で環境をよりよくし、高度な人とつきあい、本を読み、音楽を聞き、美術を見る。といっても、身分不相応な背伸びをしろと言っているのではありません。謙虚な気持ちで、自分より高度な人、物から学びとるという姿勢を持つということなのです。ですから、わからなかったら、すなおな気持ちでわかる人から教えてもらうことですね。知らないことを恥ずかしがってはいけません。そして、知ったかぶりをしないことですね。わからないことはすなおにわからないと言い、教えを請い、勉強することです。

 戦前は、商売人としての誇りを持った経験の深い店員や、番頭、主人が多かったので、きもののことならなんでも、安心して任せられたものですが、戦後は、どうしても専門家としての使命感が薄くなり、特に感覚的な面での信頼度が低くなりました。もちろん「最近の羽織丈は?」などという事務的なことはどんどん相談なさっていいでしょう。 

 今月は、美しいきもの姿になるための、精神面でのお話をいたしました。実際的なお話はこれからおいおいに。