コラム

きものの話あれこれ 村田吉茂
1971年(昭和46年)3月「ミセス」掲載

No.3 染めのきもの 2
江戸小紋を現代感覚で着る

 ただ、私に言わせれば、江戸小紋の入心技術からにじみ出る美しさは、時代を超えたものではありますが、現代の女性の誰にでも似合うという時代感覚は薄れてきていると思います。先月もお話ししましたが、現代の女性、特に若い人には似合いにくい。そこで、若い人にも似合う江戸小紋を、と私が戦前から考えたのが江戸小紋を図案的に組み合わせるということでした。

 たとえば、地を鮫小紋にし、そこに草木、風景を別の小紋で置くという方法が、その一つです。図案的に総柄にしても、絵羽づけにしてもいいわけで、柄が大きくなり、動きも出てきたわけです。この構想ですと、色調も地の色と柄の部分を変えられますから、変化がつき、若い人向きにもなりました。この方法でいけば、色留め袖、訪問着、付下げなんかのいろいろなものに江戸小紋が、年齢的にも用途的にも広く使えるわけです。

 もう一つの方法は、切りつぎとか切りばめといわれるもので、いろんな柄の極の小紋を、いろいろな形に切りついだ模様です。これだと一色染めにしても動きや変化があって、はででしゃれた感じになります。ついでに言うと、一見切りばめ模様は、一柄の錐彫り小紋より手がこんで高価にも見えますが、ほんとうは、一色染めの一柄のもののほうがごまかしがきかず、たいへんむずかしい技術と手間がかかるのです。

 また構想によっては極の小紋どうしの組合せだけでなく、ぼかし染めやろう染めを加えたりと、いろいろな手法を使った模様もできます。江戸小紋もこんなふうに図案的に扱えば、今まで合わなかったかたがたにも、幅広く着られるようになりますね。

 ただ、ここでたいせつなことは、前述の創案も、江戸小紋の風格を生かすように組み合わせるということが問題です。いたずらに、凝って技巧だけを売り物にしたり、奇をてらったりしては江戸小紋の品格をかえってそこなうことになります。そこでこの前お話しした、監督、つまり製作指導者の、美に対する意識が問題になってくるわけです。腕のいい工人の技を最高に生かす監督の感覚というのが、作品の芸感を左右することになります。そして、皆さんにくり返して申し上げたいのは、こうした作品を選ぶ目を皆さんが持つということ、つまり前にお話しした、美に対する意識をいつもみがいていただくということですね。美意識が高まると、自分にふさわしい最高のものが選べるような鑑識眼が備わります。