コラム

きものの話あれこれ 村田吉茂
1971年(昭和46年)2月「ミセス」掲載

No.2 染めのきもの 1
いい型紙には躍動感がある

 江戸小紋は、いくらいい職人が染めても、型紙がよくないといいものになりません。いい型紙は絵がいいのはあたりまえですが、彫りがよくないとだめなんです。同じ絵でも、腕のいい彫り師が彫った型は躍動感があって、いい味があります。今も残っている昔の型紙がなぜいいかっていいますと、昔は下絵を画家がかいたもんです。その下絵を腕のいい彫り師が忠実に彫ったから、なんともいえないいい味の型になったわけで、今は下絵を画家ではなく図案家がかくため、筆致がないんですね。そのうえ、力のある彫り師がいなくなったので、今できの型紙はあまりよくないというわけなんです。型紙は、昔は刃を前に押して彫っていたのですが、今は手前に引いて彫っています。前に押すほうが力がいるわけで、その力を入れるところに躍動感が出たんでしょうね。今は動きのないかちんとした型紙になってしまいました。今、残っている型紙がだめになったら、二度と同じものが染められなくなってしまうものもあるわけで、残念なことです。

 さて、現代の女性はその江戸小紋の中でどんな型を選ぶかということになります。江戸小紋だから、古典柄なら何でもいいかというと、そうではないんですね。古いものでも現代感覚に合わないものはだめですね。今の女性は、行動的ですから、静かで動きのないものは似合いませんね。飛んだり、流れたりという動きがないと似合いません。鮫小紋は、きっちりつめた柄ですが、方眼紙のようにきちんとつまったものではありません。よく見るとあの細かい点の群れに動きがある、そこで現代の女性にも似合うわけです。

江戸小紋については、また来月も、お話を進めましょう。